お葬式の豆知識
親と話しておきたい「供養と葬儀」──心残りのない別れの準備
かつては「死」を語ることがタブー視されていました。しかし、現代では「終活」という言葉が広く浸透し、本人と家族が前向きに人生の終わりに向き合うことが一般的になっています。特に、親が高齢になり、健康に不安が出てきたとき――。そのタイミングは、親子で「葬送準備」について話し合う絶好の機会です。
親が望む供養の形や遺影、葬儀のスタイルなどをあらかじめ確認しておくことで、残された家族の精神的および時間的負担が大幅に軽減されるだけでなく、親自身も安心して穏やかな最期を迎えることができます。この記事では、親が亡くなる前にしておくべき「葬送準備」についてのステップをわかりやすくご紹介します。
仏壇やお墓の準備は、相続前に進めておくのが賢明
◇親と共に迎える“その時”への準備
仏壇やお墓の購入は、実は「相続税の非課税財産」として扱われます。つまり、親が亡くなる前に購入すれば課税されずに済みますが、亡くなった後に現金で購入した場合、その現金は課税対象になります。
<お墓や仏壇の購入> | |
・[メリット] | ・相続税の対象にならない(非課税対象) ・親が望むスタイルで供養できる(親自身が決められる) ・家族の負担が軽減される |
[注意点] | ●財産価値がある物は除外 ・金の仏像や骨董品など、資産価値が高い物は非課税対象にならない ・親の理解と同意が不可欠 |
特に終活を一緒に進めている親子の場合には、「どこに納骨されたいか」「どんな仏壇が良いか」など、親の希望を反映させながら計画できるため、後のトラブルも防げます。
遺影の準備で、親の「納得」を得る
◇遺影は本人の”分身”
遺影は葬儀や法要で大きな役割を果たしますが、実際には「この写真は使ってほしくない」と本人が思っていたケースも多いもの。遺影は本人の“分身”とも言えるものです。親が元気なうちに、納得できる表情や服装で写真を撮影しておくと、心残りも少なく、本人も安心できます。
<遺影の準備方法>
・スマホやタブレットで家族が撮影
・スナップ写真をもとに加工
・専門業者に依頼して撮影・画像編集
最近では遺影データをクラウドで保管してくれる業者もあります。自然な笑顔の写真を選ぶことで、故人の人柄が伝わり、葬儀も温かい雰囲気になります。
葬儀社の選定は、親の「想い」を聞く機会にも
◇葬儀社は早めに確認、親への相談も必要
葬儀は短期間で決断を迫られる場面です。親が亡くなってから慌てて業者を探すと、希望に合わなかったり、費用面で納得できなかったりすることもあります。
<葬儀社の選びのポイント>
・複数の業者を比較し、演出・費用・対応内容を確認
・宗派や希望する葬儀形式(直葬、家族葬、一日葬など)を親と相談
・アフターサービス(納骨先・法要サポート)もチェック
生前に一緒に葬儀社を選んぶことで、親の希望を反映した葬儀を叶えやすく、家族も迷わず進められます。
相続整理は、供養とも深く関わる現実的な準備
◇親が亡くなる前に進めておきたい相続整理
葬送準備と並行して、親が亡くなる前に進めておきたいのが相続整理です。遺影や仏壇だけでなく、葬儀費用の負担や法要の継続にも「お金」が関わります。
<確認・準備しておきたい相続関連>
・戸籍謄本の取り寄せ:相続人の把握、相続手続きのために必要
・遺言書の作成:希望する遺産分割や供養の形式を明文化
・資産の名義確認:不動産や銀行口座の名義は誰になっているか
不動産を生前贈与する際には贈与税に注意が必要ですが、「3年以上前の贈与」や「相続時精算課税制度」などを活用すれば税金対策も可能です。
最後に伝えたいことを「形」に残す
葬送準備は、物理的な手続きだけでなく、「親がどんな想いで最期を迎えたいか」を知るためのプロセスでもあります。親の想いを尊重し、供養の形を一緒に整えていくことで、残された家族にとっても悔いのない時間となるでしょう。エンディングノートや付言事項を使えば、法的効力はなくても、家族に心からの言葉を残すことができます。
まとめ:葬送準備は、親子の“対話”から始まる
人生の終わりに向き合うことは、誰にとっても勇気のいることです。しかし、親が望む供養や相続の形を、親子で共有することができれば、その最期はより穏やかで温かいものになります。
<親の供養のポイント>
・仏壇・お墓の購入は生前がベスト
・遺影は「本人の納得」が最優先
・葬儀社選びは、親の意志を叶える機会に
・相続整理は葬送の準備と一体
・メッセージを「形」にして残す工夫も
「もしも」に備えることは、親を大切に思う気持ちそのものです。親が望む最期の形を叶えるために、今日から少しずつ準備を始めてみませんか?