お葬式の豆知識
【2025年春彼岸】沖縄の春彼岸に大切なウチマチ、ヤシチヌウグァンとは?
2025年の春彼岸は3月17日(月)~23日(日)、中日である春分の日は3月20日(木・祝)です。お彼岸は、全国的にお墓参りの行事として知られますが、沖縄では翌月4月頃に来る清明祭(シーミー)を迎えるための準備の時期だと位置づけられています。
地域にもよりますが沖縄のお彼岸は、お墓参りをすることを良しとせず、お仏壇に向かって供養するのが一般的です。中でも「ウチマチ(内祀り)」と「ヤシチヌウグァン(屋敷の御願)」が有名ですが、それぞれどのように行うのでしょうか?春彼岸を前におさらいをしておきましょう。
沖縄の春彼岸で行うウチマチ、ヤシチヌウグァンとは?
沖縄での春のお彼岸は、お仏壇供養を行う「仏前祭」として執り行われ、供物をお盆に盛りつける家庭が多いです。沖縄でもお彼岸にお墓参りを行う地域もありますが、仏壇を前にご先祖様供養をする「ウチマチ(内祀り)」がほとんどです。また、沖縄の春彼岸の風習として、現在も続く「ヤシチヌウグァン(屋敷の御願)」があります。
<沖縄の春彼岸>
①ウチマチ(内祀り)…お仏壇への先祖供養
②ヤシチヌウグァン(屋敷の御願)…屋敷の神々様への巡拝
③お彼岸の報告(ヒヌカンのある家)
ウチマチは、ご先祖様のお仏壇を祀る本家(ムートゥーヤー)に分家の人々が集まり、本家の家長を中心に仏壇を拝む先祖供養の風習です。慶事用のご馳走「ウサンミ(御三味)」をお供えして拝み、ウチカビを焚くというのが流れです。
ヤシチヌウグァンとは、トイレや門前、家の中央など六神様10カ所を拝む風習で、家を掃除して屋敷に住まう四方八方の神様へお参りをします。その昔は十か所の神様を巡っていましたが、マンション住まいが増えた現代では、簡易的に行うことも多くなりました。
また、ヒヌカンのある家では、彼岸入り・中日・彼岸明けの3回や、毎日7回など、地域によって頻度は違いますが、お彼岸期間であることのご報告も行います。
◇ウチマチ(内祀り)の準備と流れ
それではウチマチの流れを見ていきましょう。ウチマチには重箱料理のおかずであるウサンミを用意します。ウサンミは重箱に詰めて供えても良いですし、最近ではお皿に盛りつけて供える家も増えました。お彼岸は「彼岸祭」なので慶事用で準備します。ただし家族が亡くなって1年経っていない喪中の家は、弔事用で整えてください。
<ウチマチ(内祀り)>
①ヒヌカンへお線香を供えてご報告
・15本御香(沖縄線香は2枚半)
②仏壇にお供え物を供える
・ウチャトゥ(お茶)
・ウサク(お酒)
・供え花
・ウサンミ(御三味)
・おもち
・ウチカビ
※お菓子(ムイグァーシ)や果物(ナイムン)を供えてもよいでしょう
③お線香を供えて拝む
・家長…12本御香(沖縄線香は2枚)
・その他…3本御香(沖縄線香は半分)
④ウチカビを焚く
・家長…5枚
・その他…3枚
※灰は玄関先などに撒く
⑤ウハチ(お初)を供える
●下記どちらの方法でも良い
・重箱料理であれば、お皿に取り分けて供える
・ウチカビを焚いたボウル(カビアンジ)に入れる
⑥ウサンデー
・お供え物を下げたご馳走をいただく
※最近では別にご馳走を用意していただく
以上がウチマチの流れです。ウチマチは春分の日に行うのが理想的です。沖縄の御願では、お供え物は「奇数個」が良いとされています。また、沖縄の春のお彼岸はお祝い行事なので、あんもちなどを供えても構いません。
◇ヤシチヌウグァン(屋敷の御願)の準備と流れ
ヤシチヌウグァンとは、日ごろから家や家族を守護いただいている屋敷(家)の神様に感謝を捧げる風習のことです。沖縄では家の中の各所に6柱の神様が鎮座していると伝えられてきました。拝みを捧げる屋敷の神様は6柱10箇所とされています。
<ヤシチヌウグァンの6柱10箇所>
①台所…ヒヌカン(火の神)
②仏壇…お仏壇(祖霊神)
③敷地の四隅…ユンシヌカミ(四隅の神)※4箇所
④門の両脇…ジョウヌカミ(門の神)
⑤トイレ…フールヌカミ(トイレの神)
⑥敷地の中心(玄関と門の間)…ナカジンヌカミ(中陣の神)
マンションなども増えた現代では、玄関先もしくはトイレに向かって拝む家が多いです。
<ヤシチヌウグァンの流れ>
①玄関を開け、玄関先にお供え物を供える
・お酒
・お米(乾いた米×2、濯いだ米×1)
・ウチャヌク(三段のもち)
②家長を中心に拝む
→「お通しをしている」と報告すると良い
・住所と家族の氏名、干支
・感謝の言葉
・祈願の言葉
ヤシチヌウグァンの前には家の掃除を行っていることを前提としています。
現代では住宅事情の違いから、玄関から外に向かい「戸柱の神(トゥパシラヌカミ)」へ拝むのみ、とする家も増えました。ただ拝み事なので「御願不足(ウグァンブスク)」を恐れる声もありますが、ムリをして全てを廻る必要はありません。ヒヌカン・仏壇(家にあれば)・玄関へ「御願不足(ウグァンブスク)がございましたら、どうぞお許しください。」と伝えながら、手を合わせれば良いでしょう。
まとめ
今回は春彼岸で行う「ウチマチ(内祀り)」と「ヤシチヌウグァン(屋敷の御願)」についてご紹介しました。古くから沖縄では、春彼岸はウチマチ(内祀り)、秋彼岸はフカマチ(外祀り)と言って、秋彼岸にはお墓参りに行く風習を持つ家や地域も多くありました。一言にお彼岸と言っても春と秋の違い、地域による違いもあるので、ご自宅がどのように執り行ってきたのかを確認して春彼岸に備えてくださいね。