お葬式の豆知識
全国と違う沖縄の葬儀の流れとは?初めて参列するなら知っておきたいマナー
琉球王朝の歴史を持ち、今でも独自の文化が根付いている沖縄では、葬儀の流れも全国的な風習とは違う部分があります。今回は沖縄の大まかな葬儀の流れについて記していきますので、全国的な風習とは違いを理解することができるでしょう。
もし初めて沖縄の葬儀に参列するなら、事前に本記事を読んでおくとよいでしょう。
沖縄と全国と違う葬儀の流れ
◇沖縄では葬儀の前に火葬を済ませる
沖縄と全国の葬儀で大きく違うポイントは「骨葬」が多いという点です。実は沖縄だけではなく、東北地方や北海道、九州の一部でも骨葬が行われています。火葬を済ませる理由は地域的事情や風習などによって違いますが、ご遺体の状態が良くない場合や遠方で亡くなった場合といった理由によることが多いでしょう。
ただ沖縄の場合、もともと風葬からの洗骨を経てから葬儀を行う流れが一般的だったので、火葬を行う習慣は長い間ありませんでした。現代では火葬をしなければ埋葬することができない墓地がほとんどなため、もちろん火葬は行いますが、火葬後に骨葬という流れで葬儀が執り行われています。
<沖縄の葬儀の流れ>
①アミチュージ
②通夜
③火葬
④葬儀
⑤納骨
さらに全国的にはお通夜の際に参列者を広く受け入れるものですが、葬儀には一般の参列者を受け入れますが、お通夜は親族だけで厳かに執り行う家庭が多いです。昔は、葬儀の後にお墓までご遺骨を運ぶ「野辺送り(のべおくり)」と呼ばれる行列がありました。
沖縄の葬儀が全国と違う背景は?
日本が鎌倉時代や江戸時代の頃、沖縄は琉球王朝だったため、琉球文化に基づく葬送文化が今でも根付いています。葬儀の流れが大きく違うのは沖縄に檀家制度が根付いていないためでしょう。
◇沖縄には檀家制度がない
江戸幕府は、全ての家庭が居住地域の寺院に属する「檀家制度(だんかせいど)」を設けました。これは現代でいう戸籍制度と同じ役割を果たしており、属する寺院を「菩提寺(ぼだいじ)」もしくは「檀那寺(だんなでら)」、属する家はその寺院の檀家(だんか)と呼んでいました。菩提寺は檀家の葬祭における儀式を全て担い、境内にお墓を設けて供養をし、檀家は菩提寺を信心し、経済的にも支える仕組みとして機能していました。
けれども沖縄には檀家制度が根付いていないため、必ずしも仏教の教えに倣った葬儀である必要はなく、沖縄独自の葬儀の流れがあります。
沖縄の葬儀の流れ
◇沖縄のお通夜は僧侶を呼ばない?
沖縄が全国の葬儀と大きく違う点は、故人と近しい身内のみでお通夜を執り行う点でしょう。檀家制度とは違い、家族を亡くしたらすぐに菩提寺に連絡する必要もないので、必然的にお通夜に僧侶をお呼びすることもありません。
また、昔から沖縄では個人墓地が多いため寺院墓地がほとんどありません。寺院墓地に納骨するには菩提寺の中にある寺院墓地である場合が多いため、檀家制度が広まっていない沖縄では一族の墓に埋葬することが一般的となっています。
①アミチュージ
「アミチュージ」とはご遺体をお清めすることで全国的には清拭と呼ばれます。現代では病院でアミチュージを済ませて、霊安室へご遺体が安置されるのが一般的でしょう。ご遺体が霊安室へ安置されている間に、ご遺族は葬儀社と喪主や施主を決めてご遺体の搬送や葬儀に備えます。
②お通夜
お通夜は家族が亡くなったその日などのに執り行います。仮に執り行う通夜は「仮通夜」、火葬場で予約が取れない時や、暦として縁起の悪い日があるなどの理由で、葬儀前夜ではなく日を置いて執り行う葬儀前夜の通夜は「本通夜」と言います。
いずれにしても沖縄では僧侶を呼んで参列者を受け入れる通夜を執り行う家はほとんどありません。近所の人が葬儀日程を確認しに訪れることもありますが、基本的にはごく近しい身内以外の弔問客を受け入れませんので、もし通夜に弔問する場合は、長居をせず、香典は葬儀でお渡しするのが習わしです。服装も喪服ではなく、かしこまった普段着「平服」が適切です。
③火葬
火葬場の予約状況にもよりますが、沖縄では葬儀当日の午前中に火葬を済ませ、ご遺骨の状態で葬儀を執り行うのが一般的です。また沖縄では火葬後の骨上げに独自の風習があるので、初めて沖縄で火葬に参加する人は理解しておきましょう。
●ご遺骨は全て骨壺に納める
沖縄では火葬後のご遺骨はすべて骨壺に納めるという風習があります。全国的には直径15cmほど(5寸)の骨壺が一般的ですが、沖縄では直径21cmほど(7寸)と大きいものを用意するのが通常です。
昔は沖縄に風葬の歴史もあったことから「厨子甕(ジーシーガーミ)」と呼ばれる大きな箱型の陶器に装飾が施された独自の骨壺があり、身分の高い人が亡くなった場合に使用されていました。この厨子甕は現代ではあまり実用されていませんが、芸術的な伝統工芸品として世界的にも注目されています。
④葬儀
沖縄では大手新聞社の2社に荼毘広告を依頼するのが通例で、一般参列者は新聞のお悔やみ欄を確認することで葬儀の日時や場所を知って参列するという習慣があります。そのため沖縄の葬儀は参列者が多いことで有名ですが、基本的にはお焼香のみを済ませると返礼品を受け取ってすぐに帰宅します。
●お焼香後の会食「お斎」を設けない
一般参列者はお焼香や葬儀後の会食である「お斎」を設けないのが一般的です。また沖縄の香典は約1,000~3,000円と少ないので香典返しもありません。喪主は大きな金額の香典を受け取った相手のみ香典返しを後日お送りします。
⑤納骨
納骨するお墓があれば、葬儀後に納骨式を執り行いますが、沖縄ではごく近しい身内のみで納骨式を執り行うのが一般的です。お骨は地中ではなく、地上から石の扉を開いて納骨するのですが、墓石でできている扉は重いので開閉を石材業者に依頼するのが一般的です。
まとめ
沖縄の葬儀の流れは全国的な習慣とは違う部分も多くあります。地域によっては、昔ながらの方法で葬儀が執り行われる地域も多く、沖縄の葬儀に初めて参列する人は戸惑うこともあるかもしれないので、事前に全国との違いやその背景を理解しておくとよいしょう。