お葬式の豆知識
親の人生を穏やかに締めくくるために──家族で取り組む“4つの準備”
親の死というのは、誰しも避けられない現実です。それでも、いざというときに慌てないためには「親が亡くなる前」に準備をしておく必要があります。モノや情報の整理だけではなく、親子で向き合ってさまざまな話をしておくことも残りの時間をより豊かにするための大切なプロセスです。
今回は、「親が亡くなる前にやっておきたいこと」の中でも特に重要な4つのポイントを紹介します。整理整頓や書類の準備にとどまらず、デジタル情報の扱いや心の整理についても解説していきます。
①生前整理:身の回りを整えて暮らしを快適に
高齢になると体力や気力が衰え、家の中が散らかりがちになります。親が快適に暮らせるよう、まずは「生前整理」を始めましょう。断捨離はただ物を減らす作業ではなく、親と子の対話を通じて、過去と向き合い、未来を考える時間でもあります。
[整理のポイント] | |
①生前に使うもの | ・処分しても問題ないもの ・後世に遺すもの |
②後世に遺したいもの | ・形見分けするもの ・売却、換金すべきもの |
③不要なもの | ・処分する |
たとえば、親が長年集めてきたコレクションなどは、本人の思い入れも強いことが多いです。無理に捨てずに、「これは誰に残すか」「売却するか」など一緒に相談しながら進めましょう。専門の生前整理業者に相談するのも有効です。物理的な作業を代行してくれるだけでなく、心理的なサポートも受けられます。
[把握しておくべき主な項目] | |
①ソーシャルアカウント | ・SNS ・ブログアカウント |
②電子口座 | ・FX ・仮想通貨 ・ネット専用銀行 ・証券口座 ・電子マネー ・ポイントアプリ |
③アカウント情報 | ・サブスクリプション …など |
昔は通帳や郵便物を見ればある程度の情報が分かりましたが、現代ではすべてがオンライン化されています。万が一に備えて、最低限の情報は親と共有しておきましょう。メモやデジタルファイルでまとめておくのもおすすめです。
②戸籍謄本の取得:相続人を事前に確認しておく
親が亡くなった後に初めて戸籍を確認した際に、知らなかった相続人が現れるケースがあります。たとえば、婚姻歴や養子縁組、非嫡出子などが戸籍上に記載されていることも。生前に親の戸籍謄本を取得しておけば、相続人の確認ができると同時に、何か疑問点があれば直接親に聞くことができます。
<戸籍取得で注意すべきこと>
・除籍謄本・改製原戸籍など、特殊な書類が必要なことも
・出生から現在までのすべての戸籍が必要(自治体がまたがる場合も)
相続発生後に必要な戸籍謄本は平均4~5枚とされ、取り寄せには時間と労力がかかります。生前のうちに確認しておくことで、相続手続きをスムーズに進められます。
③遺言書の作成:意思を形にしてトラブルを回避
遺言書は、遺産分割協議書よりも原則として優先されるため、遺産相続をめぐるトラブルを避ける手段として非常に有効です。
[遺言書を作成したいケース] | |
①均等に分けにくい財産 | ・不動産(実家) ・証券 …ほか |
②相続人同士の争いが不安 | ・特定の人に財産を多めに残す ・特定の人に不動産を残す |
③遺贈 | ・相続人以外の人に財産を残す(孫、甥、姪、お世話になった人) ・相続財産を寄付したい |
④相続人全員の同意が不安 | ・認知症の相続人がいる ・相続人に行方不明者がいる …など |
他にも身寄りがない場合などにも遺言書を作成したいケースです。また、「付言事項(ふけんじこう)」と呼ばれる自由記述欄を設ければ、感謝の気持ちや背景事情も残せます。
<付言事項の例>
・「長女は介護を頑張ってくれたから多めに相続させたい」
・「代々受け継いだ土地は長男に守ってほしい」
法的効力はありませんが相続人の納得感を高める効果があり、遺恨を残さずに済むこともあります。
④エンディングノートの活用:心の整理と人生のまとめ
こちらも法的効力はありませんが、エンディングノートは医療や葬儀の希望、親しい人へのメッセージなど、自由に記録できるツールです。
・延命治療の希望
・葬儀の形式や希望
・連絡してほしい友人・知人の一覧
・感謝やメッセージ
これらを書いておくことで、残された家族の迷いや不安を軽減し、親の思いを尊重した「最期の時間」が実現できます。
まとめ:親の死をタブー視せず、前向きな準備を
「親が亡くなる前にやっておくこと」は、単なる事務的作業ではなく親子が向き合う大切な時間です。悲しみや喪失感は避けられないものですが、きちんと準備しておくことで、いざという時の混乱やトラブルを最小限にできます。親が元気なうちにこそ「どうしておきたいか」を聞き、「何を残したいか」を共有しておきましょう。そして「ありがとう」と言える時間を、今のうちに少しでも増やせることが何よりも大切です。