お葬式の豆知識
品よく整える葬儀の装い「モーニングジュエリー」とは?
大切な人を見送る場での装いは、故人への敬意と哀悼の気持ちを表す大切な要素です。特に女性が身に着けるアクセサリーには、その人の品格や心遣いが映し出されます。そんなアクセサリーの中でも「モーニングジュエリー」という言葉はご存じでしょうか?
欧米の伝統に由来し、日本の皇室でも取り入れられているこの喪のアクセサリーには、深い歴史と意味があります。今回は、モーニングジュエリーの起源から、代表的な素材や選び方についてご紹介します。
モーニングジュエリーとは
モーニングジュエリーとはヨーロッパの風習で「喪に服す期間につけるアクセサリー」を差します。「モーニング(mourning)」とは英語で「喪に服す、弔う」という意味を持っています。喪服という礼装を身に着け、さらにモーニングジュエリーを合わせることで、より格式高い装いが完成します。そのため欧米では喪服にノーアクセサリーは失礼にあたりますので気をつけましょう。
<モーニングジュエリーとは>
●喪に服す期間に付けるジュエリー
・ジェット
・オニキス
・黒曜石
・黒珊瑚(ブラックコーラル)
…など
日本はもともと和装の喪服が中心だったため、アクセサリーはむしろ結婚指輪以外は付けない風習でしたが、洋装の喪服を着用する際にはアクセサリーを身に着けるようにしましょう。
◇「モーニングジュエリー」のはじまり
1965年にエリザベス2世がイギリスで行われたウィンストン・チャーチル元首相の国葬でパールアクセサリーを着用したことがきっかけです。その後、多くの参列者たちがエリザベス女王のアクセサリーを真似ていくうちに、「パール=モーニングジュエリー(喪に服すジュエリー)」が広く認知されるようになりました。
イギリス王室から広まったモーニングジュエリーは、日本の皇室でも広まり、女性皇族が葬儀でジェットのネックレスを身に着けることがあります。日本では馴染みが薄いモーニングジュエリーですが、実は葬儀で公式に認められているアクセサリーです。葬儀でパール以外のアクセサリーなら、モーニングジュエリーを選ぶと失礼にあたりません。
モーニングジュエリーの種類
ひとくちにモーニングジュエリーと言ってもその種類はさまざまです。どんな種類があるのか知っておけば、いざという時に慌てなくて済みますよね。以下でどんな種類があるかをみていきましょう。
◇モーニングジュエリー:ジェット
●「ジェット」は、古代松や柏が化石化した漆黒の黒玉
ジェットには宝石にはない輝きと柔らかさ、細工がしやすく美しい光があります。特に英国のビクトリア女王はジェットを愛用した人物として有名です。ビクトリア女王はアルバート公を亡くした後、喪服の規制緩和まで20年以上にわたって、謁見する女性たちにジェットを身につけることを奨励しました。こうしてジェットは、故人を偲ぶ服喪用の装身具としての地位を築き、現在でも日本の皇室で使用されています。
◇モーニングジュエリー:オニキス
●「オニキス」は黒色が魅力的な鉱石
古代では魔除け・厄除けとされ、日本語では「黒メノウ」とも呼ばれます。ヨーロッパではモーニングジュエリーとして定着していますが、日本では派手なカットやデザインは、あまり葬儀の場にふさわしくないと考える人もいるため、注意が必要です。葬儀アクセサリーとして身に着けるなら、華美な印象を与えないような、光を反射しないオニキスが良いでしょう。
◇モーニングジュエリー:黒曜石
●黒曜石は、火山岩の一種
ヨーロッパで「Obsidian(オブシディアン)」の名で親しまれている黒曜石は、古代では矢じりとして使用された火山岩の一種で、ガラスに似た性質を持っています。現代では日本でも数珠として加工されているジュエリーで、葬儀のアクセサリーとしても適しています。
◇モーニングジュエリー:黒珊瑚(ブラックコーラル)
●その名の通り珊瑚からできている「黒珊瑚(ブラックコーラル)」
「黒珊瑚(ブラックコーラル)」は、木の年輪のような模様が特徴的で、磨くと美しい光沢が生まれます。透明感はなく、マットな黒さが特徴で、ジェットによく似たジュエリーです。宝石珊瑚とは異なり、希少な六放珊瑚の一種でできているので、現在では輸入が禁止されています。日本で市場で出回っているものは、輸入禁止前に入荷されたものです。
まとめ
モーニングジュエリーは、ただの「喪の場にふさわしい装飾品」ではなく、故人への敬意や哀悼の気持ちを表現する大切な文化の一つです。パールに限らず、ジェットやオニキス、黒曜石など、意味や背景を知ることで、より心のこもった装いができるでしょう。和の文化を大切にしながらも、格式ある西洋の装いを上手に取り入れることで、喪の場での礼節をより丁寧に表現することができます。