お葬儀の豆知識
親が亡くなる前にやっておきたいことは?後悔しない慌てないための10のチェックリスト
「親が亡くなる前に聞いておけば良かった!」
「親が生きていたら、聞けたのに!」
「親が亡くなる前だったら、手続きが楽だったのに!」
病気の看病など、親が亡くなる前はその後の手続きなど気にも留めていなかったものの、親が亡くなってから、相続手続きや葬儀、お墓の納骨などに困るご遺族は多いです。
本記事を読むことで、後々慌てたり後悔することのないよう、親が亡くなる前にやっておきたい、親と一緒に進めたい終活、10の事柄を解説します。
親が亡くなる前に:身の回り
親が亡くなる前にまず行いたいことは、身の回りの整理です。
高齢になると体力・気力の問題から、家も散らかりがちになるでしょう。
生前整理を一緒にしながら断捨離して、親が暮らしやすい環境を整えるためにも役立ちます。
デジタル情報の整理なども、子どもが一緒に行うことで、親が亡くなる前から思わぬトラブル回避に繋がります。
①生前整理
◇「遺したいもの」「不要なもの」を分けます
親とともに終活を始めているならば、親の意見を尊重しながら、「不要なもの」と「遺したいもの」に分ける手伝いをしましょう。
一度に全てを整理すことは、体力的にも精神的にも大きな負担です。
高齢になり掃除・整理ができない親の手足になるつもりで、共に断捨離しましょう。
また親が亡くなってから処分するものも、把握しておきます。
<親が亡くなる前に:生前整理> | |
[分け方] |
|
①生前に使うもの | ・処分しても問題ないもの ・後世に遺すもの |
②後世に遺したいもの | ・形見分けするもの ・売却、換金すべきもの |
③不要なもの | ・処分する |
専門家に相談する場合は、遺品整理や生前整理に特化した業者に相談してみるのもおすすめです。
またずっとコレクションしてきたものなど、親にとっては大切なものは、親が亡くなる前に、「処分しても問題ないもの」「後世に遺したいもの」に分けて把握し、親が亡くなってから整理します。
②デジタル情報の整理
◇パスワードなどのデジタル情報は、親が亡くなる前に把握しておきます
デジタル財産の難しいところは、IDやパスワードが分からないと情報にたどり着くことができない点です。
親が亡くなる前にデジタル情報を把握しきれず、暫く経ってからまとまった滞納分が請求されるケースもあります。
<親が亡くなる前に:デジタル情報> | |
[デジタル保存] |
・SNS ・ブログアカウント |
[アカウント情報] | ・FX ・仮想通貨 ・ネット専用銀行 ・証券口座 ・電子マネー ・ポイントアプリ |
[デジタル口座] | ・サブスクスクリプション …など |
昔は定期的に届くお知らせのハガキ、タンス奥の通帳を発見するなど、物理的な手がかりから契約や財産を見つけることができました。
しかしデジタル財産は、すべてメールやアプリの通知などで行われるため、何もかもわからなくなることも珍しくありません。
PCのパスワード保存機能から、親が亡くなった後で各種IDやパスワードが見つかった事例もあります。
それでも確実ではないので親が亡くなる前に、一緒にデジタル財産を整理して共有しておくと安心です。
親が亡くなる前に:財産整理
親が亡くなってから相続手続きを行います。
この時に、思わぬ借金の発覚など、知らない情報が突然発覚して、どのように処理していいか、思考停止に陥るケースも少なくありません。
また金融機関の預貯金口座解約など、本人がいないと手続きが格段に複雑になるものも多くあります。
親が亡くなる前に、親と一緒に財産整理を行うことで、事前に親に確認でき事柄が増え、手続きもよりスムーズになるでしょう。
③預貯金・証券口座等をまとめる
◇親が亡くなる前に、休んでいる口座を解約しまとめます
亡くなった方の預金口座の解約手続きは、予想以上に手間と時間がかかります。
例えば、親が亡くなった後に行う解約手続きでは、戸籍謄本・印鑑証明書・遺産分割協議書などを用意し、各金融機関の窓口、または郵送手続きが必要です。
<親が亡くなった後の口座解約トラブル例> | |
①必要書類を揃える事が大変 | ・遺産分割協議書がまとまらない |
②印鑑証明書の期限切れ | ・複数の金融機関への手続きをする内に期限が切れた ・再度印鑑証明書を取得する手間暇 |
③金融機関のルールが厳格 | ・必要書類が多い ・記入漏れによる再三の手続き |
④取引先銀行の窓口しか受け付けない | ・複数の金融機関へ足を運ぶ労力 ・故人が若い頃に作った口座の解約 |
⑤故人の旧姓名義の口座解約 | ・屋号付きの口座解約 |
金融機関の窓口まで行かないと、預貯金口座の解約ができない場合、故人が若い頃に作った預貯金口座の場合には、遠方の金融機関まで足を運んだケースもあります。
また旧姓名義の口座、屋号付きの口座も、手続き面での負担が増えるでしょう。
④財産目録の作成
◇財産目録を作成し、どんな相続財産がどの程度あるかを把握します
親が亡くなってから遺産相続の手続きを進めようにも、具体的な相続財産が把握できていなければ、遺産分割協議も進みません。
相続財産を把握する過程で、思わぬマイナス財産の出現、把握しきれない財産が後から出てくる可能性もあります。
<親が亡くなる前に:財産目録の作成> ●遺言書の作成にも必要 |
|
①マイナス財産の把握 | ・借金やローンなどの負債を把握 |
②プラス財産の把握 | ・不動産財産 ・金融機関(預貯金財産) ・デジタル遺産 ・各種証券 ・保険会社 …など |
事業所に確認をしても良いでしょう。
また把握しきれない場合には、依頼料が必要になりますが、弁護士や税理士などの専門家への相談も一案です。
親が亡くなる前から、プラス・マイナス財産を把握することで、相続発生後の相続放棄の判断、弁護士や税理士との相談も行いやすくなるでしょう。
⑤保険受取人の整理
◇加入する生命保険と、受取人を確認します
生命保険は保険契約に基づき、指定された受取人の専有財産とされるため、遺産分割の対象にはなりません。
ただ相続発生後に問題が生じるケースもあるため、親が亡くなる前に保険受取人を整理し、把握しておくことをおすすめします。
下記は、相続発生後に問題が生じたケースの一例です。
・離婚後、前妻がまだ受取人
・高齢の親が受取人
・受取人がすでに亡くなっている
・家族構成が変わっている
最初に契約したまま、環境が変わっても見直しを放置したケースが多いでしょう。
生命保険の受取人変更は、契約者本人が手続きを行う必要があるため、受取人だけでは手続きが進みません。
原則的には「配偶者または2親等以内の血族」が指定されますが、孫や甥姪など、相続人ではない方にも財産を残すことを検討しても良いかもしれません。
⑤お金の引き出し
◇故人の銀行口座凍結に備え、事前に引き出します
故人の銀行口座が凍結されるのは、銀行が名義人の死亡を確認した時点です。
一般的に相続人のひとりが故人の死亡を窓口で申請した後、銀行口座が凍結されますが、相続人が申請しなくても訃報欄などで銀行が故人の死亡を把握すれば、その時点で銀行口座は凍結されます。
<銀行口座凍結の注意点> | |
①死亡届の提出ではない | |
…公的な役所と銀行は全く関係ない | |
②相続人が窓口申請した後とは限らない | |
…銀行が口座名義人の死亡を確認した時点 |
そのため親が亡くなった後も、銀行口座からお金を引き出すケースはあります。
また親が亡くなった後に銀行口座からお金を引き出しても、法律上の罪には問われません。
…また預金を引き出すと、法定単純承認(自動的に相続された)とみなされ相続放棄などができなくなる可能性がありますので気をつけましょう。
親が亡くなる前に引き出すことで、相続人間のトラブル回避に繋がります。
ただし引き出す時には、使用目的もしっかりと記録することが、トラブル回避のポイントです。
親が亡くなる前に:相続整理
◇親が亡くなる前に相続整理を行うことで、スムーズになります
親が亡くなる前に相続手続きの整理を進めることで、分からない事などが確認できるため、スムーズに進みやすくなるでしょう。
⑥戸籍謄本の取り寄せ
⑦遺言書の作成
また銀行口座や不動産など、資産の名義変更も相続税対策になる場合があります。
ただし親から子への不動産名義変更は「生前贈与」、贈与税の対象です。
贈与税対象は、親が亡くなった日から3年より前に贈与された資産に限定されます。
つまり、贈与を受けてから3年以内に親が亡くなった場合は相続税の対象です。
課税免除項目に該当する贈与税であれば、税金対策になります。
⑥戸籍謄本の取り寄せ
◇相続発生後に、思わぬ相続人が登場することもあります
相続権を持つ遺族を正確に把握するため、戸籍謄本を取り寄せましょう。
親が亡くなる前に戸籍謄本を取り寄せ、相続人を把握することで、思わぬ事態に対して、親に尋ねたり相談ができます。
また、実際に相続手続きでは戸籍謄本の提出が求められるため、親が亡くなる前に戸籍謄本を取り寄せておいても損はありません。
<戸籍謄本の取り寄せで煩雑なケース> | |
[親の戸籍謄本] |
|
①特殊な書類が必要なケース | ・除籍謄本 ・改製原戸籍謄本 …など |
②出生時から死亡時まで | ・複数の自治体で取り寄せ |
親が亡くなる前なら、推定相続人は戸籍謄本の取り寄せトラブルはありません。
ただ被相続人である親の戸籍謄本はケースバイケースで除籍謄本や改製原戸籍謄本といった特殊な書類が必要になる可能性も考えられます。
この他、通常の戸籍謄本も出生時から死亡時まですべてのものが必要です。
相続時には平均的に4~5枚の戸籍謄本を準備する人も多いなか、親が亡くなる前であれば確認もしやすいでしょう。
⑦遺言書の作成
◇原則として、遺言書は遺産分割協議よりも優先されます
相続が発生すると、相続人全員で遺産分割協議を行い「遺産分割協議書」を提出しなければなりません。
けれども遺言書は原則として、遺産分割協議書よりも優先されるため、相続人の誰かが意義を唱えない限りは遺産分割協議書を提出する手順をスキップできます。
スムーズな相続手続きを進めるための遺言書作成のポイントは、相続人それぞれが相続できる財産「遺留分」を侵害しない、財産分割です。
特に下記のケースでは、相続トラブルを未然に防ぐため、遺言書作成が役立ちます。
<遺言書を作成したいケース> | |
●均等に分けにくい財産 | ・不動産(実家) ・証券 など |
●相続人同士の争いが不安 | ・特定の人に財産を多めに残す ・特定の人に不動産を残す |
●遺贈 | ・相続人以外の人に財産を残す (孫、甥、姪、お世話になった人) ・相続財産を寄付したい |
●相続人全員の同意が不安 | ・認知症の相続人がいる ・相続人に行方不明者がいる …など |
●身寄りがない |
ただし遺言書の効力は非常に強く、民法で定められた相続割合よりも優先されることになります。
遺言書の「付言事項」も活用すると良いでしょう。
「付言事項」では、財産の分配方法だけではなく、具体的なメッセージ、この財産分割に至った理由を書き残すことができます。
「次女は長い間介護をしてくれたので、多くの財産を残したい」
「代々守ってきた土地は、長男が守って欲しい」
付言事項では相続人への感謝の気持ちも記載できますが、よりメッセージ性の高い内容を伝えたいならば、法的効力はないものの、書き方が自由になるエンディングノートを活用すると良いでしょう。
親が亡くなる前に:葬送埋葬
親と一緒に終活を進めている親子であれば、親が亡くなる前に、本人が望む供養の希望を確認すると良いでしょう。
親にとっても、亡くなる前に希望の供養の形が実現すると分かることで、より穏やかな最期を迎えることができます。
子どもにとっても、忙しいなかで負担も少なく葬儀や納骨ができるばかりではなく、親が亡くなる前に本人の希望を確認できるため、迷いや後悔が少ない点もメリットです。
⑧仏壇・お墓の購入
◇お墓や仏壇は、相続税法で非課税財産です
お墓や仏壇など、供養にまつわる「祭祀財産」は継承、相続ではないため、お墓や仏壇を継承しても相続税は掛かりません。
一方、親が亡くなった後に購入しても相続財産から控除できず、お墓や仏壇を購入するための「お金」を相続した場合、相続税の課税対象となります。
<親が亡くなる前:お墓や仏壇の購入> | |
[メリット] | ・非課税対象となる ・親が望む形で供養ができる (親が自分で決める) ・残された家族の負担を減らす |
[デメリット] | ・親の理解が必要 |
[注意点] | ●財産価値がある物は除外 ・金の仏像 ・貴金属 ・骨董品 …など |
ただし親の理解が必要になるため、親が亡くなる前に一緒に終活を進めている親子に多い対策です。
⑨遺影の撮影
◇親本人が納得できる遺影を残します
「遺影にこの写真を使っては嫌」など、家族が思う以上に遺影は気にするものです。
そのため親が元気なうちに、遺影を撮影することで、より安心して最期の時間を過ごすことができるでしょう。
親が亡くなる前に終活をしている場合、遺影撮影を済ませていることもあります。
なかには葬儀を済ませてから、遺影が出てきたケースもあるので確認が必要です。
・親が希望する遺影を確認
・スマホやタブレットで撮影
・家族がカメラで撮影
・スナップ写真から加工
・専門業者に撮影や加工を依頼
また専門業者に、写真撮影や画像の加工を依頼するのも一案です。
専門業者では、遺影としてデータを保管するサービスも見受けます。
⑩葬儀社の選定
◇親と終活を進める場合、一緒に葬儀社を決める作業もおすすめです
葬儀業者はそれぞれ演出内容やプランが異なるため、終活を共に進める親子ならば、親が亡くなる前に葬儀プランを確認し、本人が希望する葬儀の形を尊重すると良いでしょう。
●親と一緒に終活を行っている場合
・新しい葬儀の形を理解する
・複数社のプラン内容や金額を比較する
・宗旨宗派など、親のこだわりを確認する
・信頼できる葬儀社の選定
・葬儀後の納骨先など希望を聴く
親が亡くなってから葬儀までの間は、時間が限られており、遺族にとってはタイトなスケジュールになるでしょう。
そのため残された家族にとっても、具体的にどの業者に依頼するかの見当が付くので、いざと言う時に慌てずに済みます。
まとめ:親が亡くなる前に、一緒に終活を進めてみましょう
昔は人の死について語ることはタブーとされる風潮がありました。
けれども高齢化の現代、親が自分で積極的に終活を進める時代です。
本人が望むならば、親が亡くなる前に一緒に終活を手伝うことで、本人が希望する供養の形や相続が実現します。
また親の気持ちを知りながら相続準備ができるため、相続トラブルもより少なくなるでしょう。